ダンゴムシが光る。

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 博物館ニュースにダンゴムシが光ることを書きました。今回はもう少し掘り下げてみたいと思います。

 兵庫県西宮市在住の松本万紀子さんより、メールをいただきました。ご子息の幸大さん(小学校5年生)が夏休みの自由研究でブラックライトをテーマに選び、庭で光る石を探していた時にダンゴムシの死骸の殻が光るのを見つけたとのことです。ところが、蝉の抜け殻も、生きたダンゴムシも光らなかったそうです。

ダンゴムシが光る

 さて、ダンゴムシについてですが、今まで試したこともなく、光るとも思っていませんでしたので、寝耳に水のような状態です。理由も思いつきません。さっそく、状況を確認するためにダンゴムシと死後時間がたって白くなった殻を探してきて、375nmの波長のLEDのブラックライトをあててみました(下図)。すると、死後直後のダンゴムシ(矢印)は殻の端や足の節で、時間がたち白くなった殻は全体が光っているように見えます。

通常光

通常光

紫外線

紫外線


 そもそも、ブラックライトで光る場合は2つに大きく分かれます。蛍光物質が紫外線に反応して、蛍光を発する場合で、蛍石などの鉱物が光ることは有名です。もう一つは、紫外線を反射して明るく見える場合で、モンシロチョウのオスとメスで、鱗粉の構造の違いでメスの羽の方が明るく光ります。今回のダンゴムシのケースでは、青白く光っているので蛍光を出しているのではなく反射の可能性もあります。残念ながら当館では光の波長を調べることができませんので、この点については未解決です。

 では、ダンゴムシは節足動物になりますが、他の種類は光らないのでしょうか?調べてみたところ、サソリの仲間は光るようです。ただし、ダンゴムシのように殻が白くなったものが光るのではなく、生きた状態でも光るとのことでした。また、その光り方もまったく違います。
 ダンゴムシをよく観察すると、死後直後でも光っているのは白い部分のようです。そのため、色を抜いて白くしてやるとどうなるのか調べてみました。漂白剤を使うと、その中に含まれる蛍光物質が光る可能性がありますので、今回は過酸化水素水(オキシドール)でダンゴムシの色を抜いて白くしてみました(下図左)。するとブラックライトで光ります(下図右)。

通常光

通常光

紫外線

紫外線



カニが光る

 カニで同くオキシドールで脱色を試みると、脱色後の方が光ることがわかりました。

通常光

通常光

紫外線

紫外線

脱色前だと、節や目などの白い部分が光っています。

通常光

通常光

紫外線

紫外線

脱色後だと、全体が光っています。

アシナガバチが光る

 今度はセグロアシナガバチというアシナガバチで、同じようにオキシドールで脱色して、光り方を比較しました。

通常光

通常光

紫外線

紫外線

 脱色前のアシナガバチはスズメバチで見たように眼が光ります。腹部も少し光っているようにも見えますがはっきりとはわかりません。

通常光

通常光

紫外線

紫外線

 脱色後のアシナガバチでは白くなった部分が光っています。ハネも光っているようです。

 節足動物はキチン質を主とする殻に覆われていますが、その色が濃いと紫外線で蛍光を発したり、反射しているのがわかりませんが、脱色して白くしてやるとそれがわかるようになるのではないかと思います。



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